こだわりの石墓ブログ

鳥の劇場でスイス人俳優に喜ばれた石のはなし。

企画 2023年09月24日

スイス人俳優のオマール・ポラスさんの舞台に欠かせない、岩石の話です。

突然、鳥の劇場、芸術監督、演出の中島さんから、
「南口石創さんなら、石に穴を開けることできますか」と問い合わせがありました。

一般の人には、石に穴を開けることは特殊と思われがちです。
ですが、石屋としては普通の作業で、どこの石屋もできることであり、
失礼ながら面白みがないと思いながら詳しく聞くことにしました。

具体的には、長さ約1m、巾50cm、重さ約400kgの安山岩で、
上に乗っても動かないよう固定し、なおかつ岩の下に空間を作り、
スモークマシーンをセットする仕様です。

そのため、鉄工場が鉄のパイプ、板を使用し、
安山岩を固定できるよう石への穴加工です。

でこぼこした安山岩の表面に、垂直に、4本穴あけをする。
なおかつ、下に約15cmほどの高さの空間をつくる目的で、
鉄パイプ固定のための穴あけです。
がぜん挑戦心が湧き出ました。

いろいろ検討した結果、普通のドリルではなく、
コア抜きでの加工としました。
4本とも垂直に、平行を保って慎重に穴あけをし、
なおかつ多少遊びを作って固定しやすくしました。

鳥の劇場の舞台道具担当の岩崎さん、鉄工場さんとの
初めての作業チームです。
まさしく、今回の演劇祭のテーマである
「類は友を呼ぶ」でなく「異類が友になる」
まさしく地で行く結果になりました。

お互いに意見交換、現場確認を
緊張感、責任感を重ねながら行い、
無事、満足のゆくものが完成しました。

この岩石は、鹿野町の「鳥の演劇祭16」(https://www.birdtheatre.org/engekisai/)の
私のコロンビーヌ」で使用され、
オマールさんが演出、出演の舞台です。

使用上で問題がないか、どのように使用されるか、
練習を見学させていただきました。

通訳の方をまじえ、石の使用方法、改善点等を質問、意見交換したのち、
合格をいただきました。

安堵感が湧き、達成感と満足感に満たされました。

演劇の中で、貴重な活躍の場を石材に与え、
石材の魅力を引き出していただいたこと、
きっと石材も喜んでいると実感します。

本番も観劇いたしました。

練習時に話されていた、客席と舞台の間に線を引き、
舞台側は非日常の空間であり、
観客にエネルギーをもらい演ずることにより、
観客にエネルギーを与えて帰ってもらう。
そのために、厳しい練習をする。

ライティングの広さ、色合い、
音を入れる少しのタイミングのズレの修正等、
「今後一緒に仕事をしたくない」と言わせかねない厳しさ。
それもこれもすべて、「お客さんのため」と、
きっぱりと断言されていました。

その結果、舞台はLEDのついた1.5mほどの木が1本。
安山岩の岩石が1ヶ所、それに主演のオマールさん1人です。

音、ライト、天井より落ちる砂?、上から降ってくる紙片などを
匠に取り込み、その中でオマールさんだけのソロの作品です。
上下とも黒の衣装で、肌の部分は顔、手、足でこれらを目立たせ、
十分に活用されています。

顔だけでも喜怒哀楽を瞬時に使い分け、
そのほかの表現も豊かです。
手や肩より腕へと流れて、指先までに行きつく動き。
その強弱、激しさと柔らかさを上手に表していました。

インドネシアの舞踊のような、
細やかでしなやかな手の指先の動き。
驚いたのは、足の指の動き、親指のつま先を立てたり、
逆にそらしていたところです。
きっと人間の動きを分析すると、
体重を支えているのは足であり、
体を動かす基本は、
実は足の指先に表れているのだろう。

日本の大相撲でも、土俵際で俵に足をかけ、
その時の足指5本の動きで勝負が決まります。
普段は無意識の足の指の動きは、実は人間の体の動きに
大きくかかわっている。
「それを見せたくて、素足になっているのだろう」と
勝手に推測しています。

また、観客の笑いをさそい、共感を覚えさせる場面として、
児童がトイレに行きたくても、
教えることに厳しい先生が許可してくれず、
もだえ苦しむシーンなども盛り込み実に多才です。

全体的に、動きの1つ1つちいさなカットでも、
一コマ一コマ決まっており、
全体にリズムがあり、美しく新しい発見の連続で
飽きの来ない、あっという間の80分でした。

本物の石を配置することで、石の持つ重圧感、
力強さ、堅実性、永遠性が象徴され、
舞台への没入感が増します。

まして背景として配置するのではなく、
石の上で表現することにより、
舞台の床の上とは異なる雰囲気になることを
オマールさんは知ってらしたと思います。

ヒトでも物でも、表現の仕方、違った切り口、新たな環境により
価値観が2倍にも3倍にもなると思いました。
今回のご縁をきっかけに、石の価値をさらに高めようと思います。



ちなみに、今回の石の加工に携わらせていただいた
南口石創についての詳しい情報はこちらにあります→https://www.nankosekiso.com/
ぜひ一度見てみてください。


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